【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
すぐにタクシーに乗せられて連れてこられたのは、駿也のマンションだった。

低層階のマンションだったが、その作りやコンシェルジュの対応から決して安くはないとそういうことに疎いわたしでもわかった。

「適当にしてて」

駿也が腕時計を外しながら、わたしにそう告げた。

「四年前とは違うところに住んでるんだね」

「何言ってるんだ、あたりまえだろ」

コーヒーメーカーに豆を入れながら彼がそう言うと、程なくしてミルの音が聞こえ始めた。

昔もこうやって駿也がコーヒーを淹れてくれた。

こだわりがあるけれど、めんどくさがりの彼は、いつも豆から引いてくれるコーヒーメーカーを使用していた。

過去と現在が入り交じるこの部屋に、なんだかそわそわしてしまう。

手持ち無沙汰のわたしは本棚の前にたち、何気なくラインナップを眺めていた。

あいかわらず、和書・洋書にかかわらず難しい本がならんでいる。

その中に異彩を放つ一冊を見つけた。手に取った水色の背表紙のそれは――。

「それ、ひよりに借りた本。悪いと思ったけどニューヨークにも持っていったんだ」

そうだ。

付き合っていたときに難しい本ばかり読んでいる駿也に、わたしが無理矢理貸した恋愛小説。
< 82 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop