【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
けれどどれもすべて一度は差し出したものの、返送されているみたいだ。

「これって、どういうこと?」

「きっとお兄さんだと思う。まあ、俺がやったことを思えばそうされても仕方ない。

謝罪したからって、ひよりを傷つけたことには変わりないから」

兄はずっとわたしのそばで、塞ぎ込んでいる姿を見てきた。

兄なりの優しさだろう。だからこそ責めるなんてことはできない。

もしこれを当時受け取っていたら、わたしたちの関係は変っていたのだろうか。と、今更考えても仕方のないことだ。

「あのときの俺は、本当に無力で。お兄さんに対する親父の嫌がらせをやめさせるのに、ひよりと別れることを条件に出された。
それだけはどうしても嫌だって言っても、他に対抗する手段がなかった」

わたしから視線を逸らし、持っているマグカップに視線を落としたまま淡々と話をしている。

しかしその感情を押し隠したしゃべり方が、かえって彼の苦悩を色濃く表しているように思い、わたしも胸が痛い。


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