【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「どうすることも出来ない自分が歯がゆくて、アメリカ行きを決めたんだ。五年という条件でな。そこできちんとお前を守れる俺になろうと心に決めたんだ」

彼の自嘲する姿に胸が痛くなる。

「あの頃の俺は、ひよりに〝待っててくれ〟って言う自信さえなかった。すまない」

あの頃のわたしは一方的に駿也のことを責めてばかりだった。

「あのとき、わたし全然そんなこと知らなくて……どうして言ってくれなかったの。わたし言って欲しかった」

「自分の家族がひよりや家族を傷つけた。それに何も出来ない自分も情けなくて。これまでの俺なら、そこで縁が切れれば終わりだったんだろうけど、ひよりのことだけは諦められなかった」

駿也の顔が苦渋に満ちている。

「親父のことを話さなかったのは悪かったと思ってる。昔からそのことで、あまりいい思いをしたことがなかったからな」

有名代議士の息子ということで、おそらく色々と苦労があったに違いない。

「四年前のことは、ひよりはなにも悪くないんだ。ふたりの関係を守れなかったのは、全部俺のせいだ」

「そんな……あのときはわたしも子供で、ただ感情をぶつけることしかできなくて、もっと駿也のことちゃんと見てれば、苦しんでいることも分かったはずなのに」

自分の至らなさに、後悔が滲む。

「だから……駿也は自分を責めないで欲しい」

「ひより……」

わたしの名前を呼んだ彼は、自分のマグカップをローテーブルに置くと、そっとわたしの手に自らの手を重ねた。

至近距離でお互いの視線が絡む。

「もう俺は、あのころの俺じゃない。これからは誰にもお前のことを傷つけさせない。だからもう一度、俺のものになってくれ」

熱いまなざしに緊張が高まり、息をのんだ。
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