【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
土曜日の十時、わたしは空港にいた。

たしかに泊まりの用意をして来いとは言われたけれど、まさか旅行とは。

チケットに書いてある行き先は大分。

「なぜ、大分……」

思わずチケット見てつぶやいたのを、隣に座る駿也は聞き逃さなかった。

「温泉入りたいだろ? 温泉」

「まあ、入りたいけど」

だけど温泉ならもっと近場にもある。それなのにいきなり週末を使って九州まで行く!?

なんだかもう驚きすぎてついていけない。

そんなわたしの耳元近く、チケットで口元を隠した駿也が、ささやいた。

「ちゃんと露天風呂つきの部屋にしているから、一緒に入ろうな」

「なっ、何言ってるの!?」

一気に赤くなったわたしの顔を見て、声をかみ殺して笑っている。

そんな彼を軽く睨んだけれど、目が合うとわたしも一緒に吹き出して笑い出してしまった。

「また一緒に旅行にいけてうれしい」

わたしが素直にそう言うと、駿也がわたしの手をそっと包み込んだ。
「そうだな」
四年前のわたしたちも、時間をみつけては一緒に色々なところにでかけた。

夏休みには、バリ島に行き人生はじめての海外旅行にはしゃいだ。

冬休みには、北海道でスノーボードを楽しんだ。

あまりにも下手すぎるわたしに駿也はずっと笑い転げていたけれど、ずっと側で一緒に滑ってくれた。

たしかあのとき大きな雪だるまがあって、その陰でキスしたんだった。

次から次へと浮かび上がる思い出に、思わず顔がほころんだ。

「なに笑ってるんだ?」

「ううん、何でもない。楽しみだなぁと思って」

あれこれと話をしているうちに、わたしたちはあっという間に機上の人となった。
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