いつかのラブレターを、きみにもう一度
「お母さんには内緒?」
「話したの、姫野が初めて」

 バス停に着くと、一分も経たないうちに私が乗るバスが来た。

「それじゃ」
 と手を振って別れた後で、何か忘れているような気がしながらバスのステップに足をかける。

「あ! そうだ! 明日の試合、頑張ってね」

 ギリギリで思い出した私は、振り返って央寺くんにそう言った。

 央寺くんは一瞬びっくりしていたけれど、「ふ」と下を向いて笑って、
「どうも」
 と手を上げた。

 その少し照れるように笑った顔が印象に残り、バスの中で私は何度もその顔を思い出した。



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