いつかのラブレターを、きみにもう一度
その、央寺くんだ。

 彼にとってはどうでもよくても、私にとっては十七年生きてきて一番忘れたい記憶の張本人。幸いにも翌月の夏休み中にお父さんの仕事の関係で隣の市に引っ越したから、もう絶対関わることはないだろうと思っていたのに……。

 考えてみたら、市と市の境にあるお店だ。あの中学校のクラスメイトがいる可能性はゼロじゃないと、もっと警戒していればよかった。そもそもお父さんが、もっと遠くの県に転勤だったらよかったのに……。

 いくら無駄な考えを巡らしても、どうしようもない。明日も一緒にバイトをする、という事実は変えられない。店長の顔を思い浮かべると、辞めたいとは言いにくいし。

「……嫌だなぁ」

 その夜、私は枕をかかえ、顔をうずめてうめき続けた。

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