いつかのラブレターを、きみにもう一度
「あと何分? バス」
「五分……くらい。央寺くんは?」
「十分くらい」
また会話が途切れて、屋根の向こうに見える鰯雲へと目を移す。ちょっとくすんだ橙色の夕焼けが雲を縁取っていて、その手前を鳥が数羽飛んでいった。
続く沈黙にちらりと隣を見ると、央寺くんも空を見ていた。バイト中は覚えることが多くて凝視する余裕なんてないし、今も盗み見程度ではあるものの、その横顔は端正だった。
殿村くんみたいな派手さはないけれど、なんというか……品があるのだ。中学校の時も、なんだかみんなよりも一段上にいるような落ち着いた顔と雰囲気だったけれど、それに磨きがかかっている気がする。真顔が少し不機嫌そうな顔に見えるところはあるものの、身長も高くなっていて、きっと高校ではモテているんだろう。
そう……思い出した。そんな、少し壁があるようなオーラがあったから、あの日、誰もいない教室で話をした時、ちょっとしたギャップを見て……。
「“もう聞かないから”って言ったけどさ」
「五分……くらい。央寺くんは?」
「十分くらい」
また会話が途切れて、屋根の向こうに見える鰯雲へと目を移す。ちょっとくすんだ橙色の夕焼けが雲を縁取っていて、その手前を鳥が数羽飛んでいった。
続く沈黙にちらりと隣を見ると、央寺くんも空を見ていた。バイト中は覚えることが多くて凝視する余裕なんてないし、今も盗み見程度ではあるものの、その横顔は端正だった。
殿村くんみたいな派手さはないけれど、なんというか……品があるのだ。中学校の時も、なんだかみんなよりも一段上にいるような落ち着いた顔と雰囲気だったけれど、それに磨きがかかっている気がする。真顔が少し不機嫌そうな顔に見えるところはあるものの、身長も高くなっていて、きっと高校ではモテているんだろう。
そう……思い出した。そんな、少し壁があるようなオーラがあったから、あの日、誰もいない教室で話をした時、ちょっとしたギャップを見て……。
「“もう聞かないから”って言ったけどさ」