いつかのラブレターを、きみにもう一度
「とりあえず、教育係から提案なんだけど、話をする練習をしたほうがいいと思う」
「……話?」

 何を言っているのだろうか。私は地面に転がる小石から、央寺くんへと視線を移す。

「うん、要は慣れだと思うから、たくさん話せば話すほど緊張も解けるはずだし、警戒心も薄れると思う。きっと、学校でもそんな感じなんでしょ?」
「……う」

 央寺くんて、本当に正直にものを言う人なんだな。

「土日はいつも同じシフトで、帰りはこのバス停で待つわけだから、この時間を利用したり……」
「…………」
「あとは……そうだな、平日は学校が違うから……」

 央寺くんは、私の意見なんて聞く気がないようで、ひとりで思案し続けている。ヘッドライトを灯しはじめた車が、次々と目の前を通りすぎていく。

「将棋」

 彼は、まるで漫画のように拳で手のひらをポンと叩いた。最初は聞き間違いかと思ったけれど、
「姫野、寝る前に将棋しよう」
 央寺くんは、はっきりとそう言った。



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