いつかのラブレターを、きみにもう一度
「……まだ高校生だし」
「そんなこと言ってたら、いつまでたっても……」
「おーい、今町。ソーイングセット持ってない?」

 学食から教室に戻ってきた早々、頼子に声をかけてきたのは殿村くん。少し長めの前髪をヘアピンで留めていて、それがかわいいなんて言われてもてはやされるような男子だ。

「持ってないわよ」
「えー、ウッソ? 持ってるキャラじゃん、今町は」

そう言われた頼子は、思いきり眉間にしわを寄せる。

「そうやって決めつけないでくれるかしら? 殿村くんも“殿”呼びされて王様キャラ定着してるの、不服でしょ?」
「ぜんぜん。むしろ大歓迎。今町も側室になる?」
「ご冗談。死んでも嫌だわ」
「ハハ、ウケる」

 ポンポンと続くふたりの会話に入っていけなくて、私はバッグからコソコソとポーチを出す。そして頼子の制服の袖を殿村くんに見えないようにクイクイと引っ張る。
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