恋愛の仕方おしえます。

それから藍川を家まで送り届けるため
身支度をして、
2人で車に乗り込んだ。


助手席に座る藍川に住所を聞くも、
こいつはまたボケーっとしていて
一向に答えない。


仕方ないので俺は、車を端に寄せて路駐し、
きちんと藍川の方を向いて問いただそうとした。



・・・が、


「おいって…!」


俺のその一声に
なぜか突如としてキレはじめた藍川。


「信じられない…!サイッテー!」


「……っ!?」


「昨日私を助けてくれたのは、
偽善活動だったんだ?」


「…は?」


「酔った女に手を出すなんて…
…あんたなんて、
あの長髪クソ野郎と同類じゃん!」


「…おい、待て。落ち着け。
急にどうしたんだよ?」


「これが落ち着いてられるかっての!
こっちはね!初体験だったんだからね!!!」



………!!


え…?ハジメテ?


でもこいつ、もう26だし…



…彼氏がいるって事は…



いやいや。


……どんだけ清く正しい交際なんだよ…。




「なんでそんな事したの?
ありえない…、本当にありえないっ!!
私…男が嫌いなのにっ!!!」


「!!!」


次から次へと、
知らない情報ばかりが頭を駆け巡る。


俺はまだ藍川の事を何もわかっちゃいなかった。



男嫌いだから彼氏とも
まだそこまでいってなかったってわけか…。



………それなのに、俺は………。





俺の肩をバシバシと殴りながら
尚も文句を訴え続ける藍川。


彼女は悲壮に暮れた顔で
一生懸命自分の気持ちを伝えようとしていた。


「嫌い…っ!!キライ!!あんたなんか…!!」



その一言一言が、
俺の胸の奥を酷く突き刺した。



藍川の小さな拳を握りしめると、


ついに彼女は泣き出してしまった。



今更ウソだと言い出す事もできず、
ただ肩を震わせる彼女を見つめている事しか
できない馬鹿な俺。


力無く藍川の手を離すと、
その手のひらで彼女が涙を拭ってる。



こんな姿見たくない。



泣かせるつもりなんかなかった。



こんな風に悲しい顔をさせたかったわけでも…。






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