恋愛の仕方おしえます。
グレーのロングジャケットスーツを着て
いつもよりも場の雰囲気に馴染んでしまっている桐山社長。
もし、ここに白馬がいたのなら
誰がどう見ても彼は"王子様"だ。
もしかしたら、今日はガラスの靴でも隠し持っているんじゃないだろうか。
…なんて嫌味を言いたくなるほどに
完璧な容姿だった。
「桐山社長、お待たせしました!」
目の前まで行って声をかけると
ようやく私に気づいた桐山社長。
「…あれ…、藍川?」
珍しく呆けていたのか、
私を見るなり無意味な確認をする桐山社長。
しかも昨日は下の名前で呼んでいたのに、
今日はまた苗字に降格しているし。
…って、その理由は自分でも分かってるので
特に追及する気もないのだけれど。
「なんですか、その質問?
藍川に決まってるじゃないですか。」
「いや、ごめん。
いつもの眼鏡してないからわかんなかった。」
…そうか。
そういえば、今日はダテ眼鏡を外しているんだった。
普段かけているのは男避けの為だから、
パーティーにまで掛けてくる必要はないかなと思って…。
…それに、
社長にもダセェ眼鏡だと非難されていたし…。