レフティ

「講師の山辺(やまべ)と申します。えーと近藤様のご紹介の~…」

「あ、桃田です。よろしくお願いします」

桃田さん!と可愛く手を叩いた山辺先生は、私と同い年くらいか、もしくは年下に見えた。

小さな顔に、位置も大きさも何一つ間違うことなく配置された顔のパーツ。
自然に流した前髪が、動作の度に目に少しかかって、妙な色気を醸し出している。

「えー、普段は他の生徒さんもいたりするんですけどね。今日はキャンセル続出で、まさかのマンツーマンになりました~」

この気の抜けた喋り方だけは、いささか残念感が漂う。

ただ、その気の抜けた喋り方とともに見せる、ふにゃっとした笑い方は、簡単に私の胸を射抜いた。

「じゃあ早速、持ち物の確認からしますね~」

「はい、お願いします」

腰ひも2本、タオル2枚、肌襦袢、裾よけ―と、先生は次々に持ち物を読み上げた。
どれも成人式のときに購入したもので、いまいち役割はわかっていない。

「全部ありますね。普段からお着物お召しになられるんですか~?」

先生はそう言いながら、自分の着物の帯を解き始めた。

「あ、いや…浴衣くらいしか…」

恐らく、一緒にやりながら説明してくれるのだろう。
そう予想は出来たって、2人きりの部屋で目のやり場に困りながら答えると、先生はそんな私を軽く笑い飛ばした。

「大丈夫です、ちゃんと下に普通の服着てます」

裾をめくって黒いスラックスを見せたが、先生。そういう問題じゃないんですよ。


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