ドアの向こうには
私は後悔した。興味半分でこの森に入ったことを。
何かこの世のものではないようなものがいそうな雰囲気に包
まれた木々が落ち着かない様子で揺れている。
「迷ったね。どうしようか」
「どうしようかって美奈が入ってみようって言ったんでしょ
うに」
「だってあの猫がここに入っていったんだもん」
「勘違いなんじゃないの?私には見えなかったのよ」
「勘違いなんかじゃないよ!ほんとにいたん…だ…」
美奈が急に口を閉じ、遠くの何かを見つめはじめた。
急に黙った美奈を見て、私は後ろを振り返った。
美奈の目線の先には
猫がいた。