君の見る空は青くない。

 「ただいま。」

 
 「おかえり!お兄ちゃん。」


 中2の妹の真由が出迎える。


 俺達の両親は共働きで、帰りは日付が変わることが多い。


 家事が得意な真由は、母の代わりに家事をしてくれている。



 「お兄ちゃん、夕飯どうする?」


 「俺もなんか手伝うよ。」


 いつもすべての家事をしてくれている真由の仕事を、少しでも減らしてやりたい。


 「いいよ、お兄ちゃんの料理は食べ物じゃないから。」


 「ひっど。」


 二人で笑いながら会話する。

 

 「あ、お兄ちゃん。」


 真由がニヤつくのを見て、ため息をつく。


 「なんだ、またひやかしかよ。」


 真由は俺が水夏理に片思いをしていることを知っている。


 だから、こうやってひやかしてくるのは日常茶飯事だ。

 
 「いつもとかわりないよ。」

 
 「えー、つまんないなぁ。」


 「ワルカッタナ。そういうお前はどうなの。」


 ぼっ、と真由の顔が赤くなる。


 真由は、水夏理の兄で、俺の部活の先輩である春樹くんのことが好きなんだ。


 春樹くんは17歳の高校生だから、中2の真由とは歳が3つ離れている。


 「っ…。いつもと一緒だしっ。」


 顔を赤くそめながら言う真由は、本気で春樹くんのことが好きなんだろう。

 

 -ピンポーン。

 
 
 「お、噂をすれば。」

 
 ニヤニヤしながら言う俺の目には、真っ赤になっている真由が映っている。


 「うるさいっ!」 

 
 そういいながらも、玄関に向かう真由の後ろを、こっそりとつける。

 
 
 「春樹くんっ!」


 「真由、ごめんね、こんな時間に。」


 幸せそうに笑う二人を見て、けっこう「羨ましい」、と思う。

 
 
 真由と春樹くんは、付き合って3ヶ月経つカップルだ。 

 


 「…うん、じゃあね。」 


 「うん、ばいばい。」


 
 …チュッ。

 

 やべっ、俺、身内のラブシーン見ちゃった。 

 
 こっちが恥ずかしいわっ///。
 

 俺は、ささっとリビングに戻った。

 
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