俺様系和服社長の家庭教師になりました
8話「忠告」




  8話「忠告」



 昼休み。
 今日は翠の担当のお客様がお昼過ぎに来店され、昼食を食べる時間がなく、遅めのランチになってしまった。手作りのサンドイッチと紅茶を飲みながら、休憩室で一人で過ごしていた。
 最近、毎日持ち歩いているものがある。それは、色からもらったギリシャの写真集だった。

 色から貰った大切な物で、手放したくないのだ。それに、憧れのギリシャの写真を見ると、元気が出てきて頑張ろう!と思える。休憩中にギリシャへの思いを馳せて、幸せに浸るのが日課になっていた。


 それに、今日はそれだけではなかった。
 色は、ギリシャ語の覚えがとても早く、本人も「早く会話をしたい。」とも言われているので、今日の授業から会話をメインにしようと思っていた。ギリシャの話題を出していけば、勉強しながらギリシャの事も、覚えられると考えたのだ。
 なので、休憩中に何を話そうかと、ギリシャの写真集を見て決めようと思っていた。


 「冷泉様はギリシャのどこにお店をつくる予定なんのかなぁ?」


 翠は、独り呟きながらそんな事を考えていた。
 初めてのギリシャ出店だから、やはり人が多い街中なのだろうか?それとも、観光名所なのか、それとも自然が多いところなのか。
 それを考えるだけでも、とてもワクワクした。

 そして、ギリシャの神秘的な雰囲気の中を着物姿の彼が歩いたら、どんなに素敵なのだろうか。着物でなく私服だとしても、目立つ容姿をしているから注目を浴びてしまうのではないか。
 

 「そういえば、冷泉様はどんな私服なのかな。それに、スーツ姿も絶対にかっこいいわ。」


 いつの間にか、色の事ばかり考えてしまっていたが、それに気付いたのは休憩時間が終わる間際で、結局彼のことばかりを想像して休憩は終わってしまったのだった。

 


 その日、仕事が終わり急いでいつもの料亭に向かうと、誰かが店先に立っていた。そして、翠を見つけると丁寧に頭を下げたのだ。よく見ると、翠が知っている人物だった。
 色の秘書、神崎と呼ばれていた綺麗な女性だった。


< 42 / 116 >

この作品をシェア

pagetop