俺様系和服社長の家庭教師になりました



 『お客様、私、一葉が担当させてもらいます。』
 『あぁ!話せる方がいらっしゃったか。ありがたい。』


 そう言って笑ったのは、黒髪に褐色、そしてブルーの瞳。外人の男性だった。そして、顔には皺が目立つご老人だ。翠が少し見ただけでも、身につけている物を高価なものだとわかった。だが、それがとても似合っており、いやらしさがまるでないのだ。


 『私もギリシャ語を久しぶりに話せて、とても嬉しいです。』


 そう言うと、その老はニッコリと笑ってくれた。ギリシャ人のお客様は、奥様のために日本限定の物を買いに来られたようだった。


 『仕事でアメリカに行くと嘘をついてきたんだよ。サプライズをしたくてね。』


 奥様は日本好きらしく憧れているのだが、足がわるくて旅行にも行けないという。そのため、奥様お気に入りのブランドで日本限定の桜の刺繍が入ったバックと財布を選んで購入してくれた。

 このビルの上に、日本の伝統工芸品や着物屋さんがあると案内すると、とても喜んでいてくれていた。


 『お嬢さん、本当にありがとう。あなたに会えた事をとても感謝してます。ぜひ、ギリシャにもおいでなさい。』


 そう言って、老人は帽子をとっても挨拶をして帰っていった。

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