俺様系和服社長の家庭教師になりました
「どうした?何かあるのか?」
「あの……目的地にもついたので、手繋がなくても大丈夫です。」
「………おまえな……。」
「さ、行きましょう!冷泉様。」
翠は足早に先を歩き、見つけたお好み焼きの出店に向かった。
誰も並んでいなかったので、お店の人に「すみません。」と声を掛ける。
すると、隣に色が到着し、「2つください。」
と翠のかわりに言い、そしてお金を出した。
そして、品物を受けとると、また翠の手を取って歩き始めた。その顔は、憮然としていて少し怒っているようにも見えた。
「冷泉様、あの………..。」
「迷子になるかもしれないからダメだ。」
「迷子って…私は子どもじゃないですよ?」
「同じようなもんだろ。」
「そんなに年離れてないですよ!」
翠が反抗しても、彼の考えは変わるはずもなく、先ほどよりも強く手を握られてしまう。
きっと翠が強く反発したら、彼は手を離してくれるのはわかっていたが、それを翠はすることが出来なかった。
甘い誘惑には勝てずに、翠はそっと彼の手を握り返した。
それから、色は適当に食料や飲み物を買ってくれた。そして、場所を探そうと翠が提案すると、色は「予約席があるから大丈夫だ。」と言った。
取引先から花火大会の席を譲ってもらったと色から説明をしてもらい、翠は初めて「予約席」というものがあるのを知った。
到着すると、地面に椅子を置いただけの簡単なものだったが、混雑することもなくゆっくり見れる特等席だった。
「すごいですね!目の前に遮るものがないです。」
向かい側の河川敷から打ち上げるようで、その正面に位置する予約席は、一番見やすい位置なのだろう。翠は久しぶりの花火大会であり、特別な席で色と見れることが嬉しくて興奮状態になっていた。
待っている間、屋台で買ったものを食べたり、他愛もない話をしたり、ギリシャ語で会話をしたり。2人で楽しいを過ごしていたため、花火の打ち上げまであっという間だった。