私と君と夢物語。
1階では私が見たかったバラエティー番組が放送されていた。


「あああ!忘れてた!」

すぐテレビに駆け寄った。

「やっぱ杉本智喜くんかっこいい〜!」


最近色んなドラマや映画に引っ張りだこの俳優の杉本智喜。

私は売れる前の3年前から大好きだ。

「録画してるからいいじゃない。」

呆れたように母に言われる。

「ダメなの!」

ダメに決まってるじゃん、リアルタイムと録画もどっちも見ないと!

杉本くんのファンクラブに入るか絶賛悩み中なんだよね。


「ええ〜、もう終わっちゃうの〜……」

気づけばもう11時。


歯磨きを終わらせ、2階へ急いだ。

あ〜、ねむ。



机の上のケータイを開いた。

来ていたLINEは全て楓。

内容は彼氏のこと。彼氏とのLINEのこと。今日会えたこと。

「ほぼ惚気じゃん!」

いや、全部だな。ははは、

ツッコミを入れつつも本当に幸せなんだなってほっこりする。

私も彼氏欲しいな〜、なんて、



しほからLINEが来た。

「ね!宿題見せて!」

そーいやあったな〜、やってねえわ〜、

「あ、ごめ、やってない笑」

「なんだよ〜」


椅子にもたれかかりながらふぅと息をつく。

少しだけ開いたカーテンの隙間からさっきより強くなった雪が降るのが見えた。

「あー、さぶっ」


身震いをして学校のボストンバッグを漁る。

「これ〜?めんど〜、」

宿題らしき数学のプリントが出てきた。


自分の大っ嫌いな数学。しかも問題数多いし。

筆箱と共に机へ投げつける。



まったくもって手につかない。

1問も解いてない状態でシャーペンを置きスマホを手に取る。

音楽アプリを開いた。

数ヶ月前に発売した杉本くん初のソロCDの曲。

杉本くんが出演していたドラマの主題歌、挿入歌。

最近話題のあの曲。アイドルの曲。

アップテンポな曲、しんみりした曲。


自分の大好きな曲ばっかり。

この曲たちの順番も覚えちゃってるし、

いつも聞いてるしね。


シャッフルで流そーっと、


杉本くんの出演していたドラマの主題歌。

口ずさみながらもう一度シャーペンを握った。

「はぁ、がんばるか、」



最後の一問が解けない。

思考が停止する。

わかんない、っていうよりめんどくさい。

「もういっか。また明日しよ。」


シャーペンを筆箱に投げ入れ首を回した。

ずっと下を向いていから回すたびにコキコキと音が鳴る。


ベッドに倒れこんだ。

ふと頭に浮かんだのは翔磨、楓と大貴。

私、私が思っている以上に楽しかったみたいだな。

あっという間の今日が終わる。
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