私と君と夢物語。
それを聞いた楓は私に目を合わせ、しょうがなさそうに、私をいじるように、私を離した。
するとすぐに翔磨にひょいと引き寄せられた。
「うわぁ!」
ずっこけそうになる私を支えようとした手が私に当たりそうになるがなんとか私は踏ん張り元の体制に戻した。
胸がドキドキする。
“嫌いじゃない” 翔磨が凄く近い。
「ご、ごめん、ありがとう」
「おう」
そう言うとすぐに手は離された。
まるでこの一連の流れはいつものことのように慣れた手つきだった。
どこかの少女マンガのように手を離すのを忘れちゃうみたいな可愛い展開は無いのね、
少しだけ期待した私はバカだ。ただこの出来事でもう十分きゅんきゅんするマンガみたいなのに、
手に残る翔磨の手の暖かさが冷たい空気で冷めていく。
そのすきに楓は手を広げた大貴に抱きついた。
凄く幸せそうな楓を見るといいなって心が温かくなる。
翔磨のドキドキさせられたせいで翔磨と将人と楓らを茶化すのに出遅れた。
もしかしたら私のほっぺは紅いかもしれない。
でも暗いから見えないよね?
横に居る翔磨の顔を見る。私の斜め上にある翔磨の顔。
かっこいいな……。
なんで目を合わせてくれないの?気付いてるでしょ?私が貴方を見てること。
ねぇ翔磨?他の女の子にも同じようなことしてるの?さっきみたいこと。
私だけならいいのに……
でも、学校が違うからそんな事も分からない。
かと言って聞けるものでもない。
聞きたいのに、もっと言えば好きな人居るのかも聞きたいのに、
あぁ、受験なんてしなければよかった。
そしたら翔磨達と楽しく過ごせてたかな。
もしかしたら付き合えてたかな?
高望みしすぎか。
だって普通に翔磨ってイケメンなんだもの。優しいし。背も高いし。私には不釣り合い。
でも逆に今さっきみたいなことを他の女の子にして私が嫉妬で狂っちゃうかな。
彼氏でもない人に何を思ってんだか。
腕時計の針は6:20を指していた。
辺りも暗くなり風はさっきより冷たさを増す。
鼻がムズムズする。
「へっくしょん!!」
2人がようやく状況に慣れていい感じにイチャついてるときにくしゃみをしてしまった。
鼻をズズっとすする私。風邪ひいたかな。
「大丈夫?」
1番初めに声をかけてくれたのは紛れもなく翔磨だった。
そうゆうところ。
私が勘違いしちゃうでしょ?
なに翔磨、私に勘違いしてほしいの?していいの?
正気が戻ったのか楓はハグで照れたのかやっぱり私にくっつく。
「楓?そろそろ帰んない?」
「ほんとやね、」
もう一度くしゃみが出そうになるけど頑張って耐える。
「そろそろ帰るね、じゃあまた今度」
楓はそう言うと大貴に手を振った。
私も
「じゃあね」
って3人に手を振った。
最後に翔磨と目が合った。