私と君と夢物語。
私と楓は駅と逆の方、家の方へ歩き出す。男子3人は駅へ向かう。
嬉しかったのか楓はニコニコして私の腕を叩いたり握ったりする。
「ってか莉桜嬉しかったでしょ?」
急に真顔になってなぜそんなコトを言う?!
「ん、まぁ確かに?」
「どーだった?」
楓は楓で私と翔磨をくっつけてこようだとか、私の心をあっちに持って行こうとする。
"単純"ってよく言われる私は思い込みが激しかったりすぐだまされる。
元カレのお陰で彼氏なんかほしくなかったけど、ほしいなんて思ってしまう。
自分で自分に呆れる。
「んーちょっとドキッとしたかな~?」
「ふーん」
私をいじるようにニヤニヤと楽しそうに楓が言った。
底がすり減ったローファーからは地面の硬さがよく感じられて痛い。
手を握られた感覚はほのかに残ってはいるが、温かさはとっくに消えてしまった。
2月はもちろんの如く寒い。
冷え性な私の手足は酷く冷たくなっていた。
「楓は~?」
さっきの楓のように言った。
「なんか幸せだった。温かかった、やっぱり大貴大好き」
幸せ全開だな。
「う~!リア充!!」
「彼氏つくりな~!」
「誰かーー!」
2人でふははと笑う。
いつも定番のこの流れ。
「翔磨でいいじゃん!」
「ん~、」
「莉桜ツンデレかよ」
翔磨と付き合いたい気持ちは山々だ。
でも素直に愛情表現ができない。素直にボディタッチでもしてみたい。
翔磨と青春したい。誰かじゃなくて、翔磨と……。
いつも笑って莉桜って呼んでくれる翔磨は誰が好きなの?