私と君と夢物語。

 「じゃねー」


そう言って交差点で楓と別れる。



街灯がバレンタインでいちゃつくカップル達をムーディーに照らす。

羨ましいとか思いながらそんな人達を横目に歩道橋を寂しく一人で登る。




今日はいつもより遠回り。

何かを忘れてるような気もするけどまぁいっか。


一人でさっきの余韻に浸りきゅんきゅんする。

嬉しくなって少しピョンと軽く弾んだ。


2月の厳しい寒さも少しだけ心地よく感じられた。



「あれ?莉桜?」

「へ?」



あがっていた口角が少し下がった。





「あーー!優斗!」


優斗は近所の幼なじみ。中学校も同じ。


バカなくせに私に負けじと勉強してた頃が懐かしい。



私が公立に落ちた時もそっとそばに居てくれて、慰めてくれた。





「なにしてんの?」


久しぶりにゆっくり話せそうでまた口角が上がる。



「楓の付き添いの帰り」



優斗の鞄の中には女子から貰ったであろうチョコの箱が何個も入っていた。

モテるんだな、優斗って。




「あーそうゆうことね。」

「優斗は?」

「俺は~塾の帰り。」

「真面目だね。」

「まぁね。」


優斗は私の近くにきて一緒に歩道橋から走る車とカップル達を見下ろした。


「彼女いるの?」

「ん?居ないよ。」


少し寂しそうに呟いた優斗。


「莉桜は?」

「もちろん、居ません!」

「もちろんって、ちょっと前いたじゃん」




元カレのことは思い出したくない。

いけないことを言ったと感じ取った優斗はすぐ口を閉じた。

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