そして、冬がやって来る。
「じゃあ、どうすっかな……。」
「何が?」
「また、会いたい…と思って。…お前、面白いから。」
そう言った彼の頬が、少しだけ赤く見えたのは気のせいだろうか。
「…あ、パソコンなら持ってるから、メールなら出来るよ。二日に一回ぐらいしか確認しないけど。」
「…メアド、教えたらメール送ってくれるか?」
「…いいけど、上手くないと思う。文字にするの。」
「じゃあ、会って話す予定だけ、メールで決めよう。」
「…それなら、いいかも。」
デジタルな手段だけで話をする…なんてことになったらどうしよう、とか思ってたけど、それなら大丈夫そうだ。
やっぱり、顔を見て、声を聞いて、会話をするのが一番いい…と私は思うから。
会ってないけど、連絡のやりとりはしてて、仲が良い…なんて関係は嫌だ。会えるなら会いたい。
「メモ帳とかある?」
「あるよ。使う?」
「使う。貸して。」
「ほい、ペンも。」
「ありがと。」
ペンとメモ帳を取り出して渡すと、彼は立ち止まって、懐からスマホを出し、それを見ながらメモ帳にペンを走らせた。
「…はい、これ、俺のメアド。」
「ありがとう。何か送る。」
「うん。よろしく。」
彼はまた、笑った。
つられて、私も笑った。
「『件名:私だよ。』にしようかな。」
「怖えーよ。」
私が軽口を叩くと、彼はすかさずツッコミを入れる。
彼と話していると、何故か気を遣わないでいられるから、楽だ。
その時、風が吹いた。