そして、冬がやって来る。
「……もうすぐ、立冬だよ。」
「そうか。…まだ11月なのに、カレンダーの中では冬なんて面白いよな。」
「…本当にね。」
「あ、ほら、着いたぞ。」
そう言われ、俯きがちの顔を上げると、確かに私が自転車を置いたところだった。
「もう、着いたんだね。…早かったな。」
「ふっ、確かに。」
リュックサックの外ポケットに入れていた自転車の鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。そして、鍵を回した。
カチャッ
という音と共に、自転車のロックが外れた。
「蘭。」
と、彼は私の名前を呼んだ。
「…なに?……翼…?」
「こうしてると、仲が良いみたいだな。」
「ふはっ。確かに。」
「じゃあな、また今度。」
「うん、またね。ありがとう。」
私は自転車に跨り、ペダルを漕ぎだした。
後ろが気になり一瞬だけ振り向くと、翼が手を振っていたので、私は前を向きながらも、片手を上げて手を振り返した。
これからやって来る冬はきっと…楽しくなるかも。
fin.