そして、冬がやって来る。
*
もみじの原までは、かなり、思っていたよりもかなり距離があった。
…こんなに歩けたのか、私。
普段の移動は、専ら自転車なのであまり最近は歩いていなかった。
もしかしたら、歩いたらすぐに疲れてしまうんじゃないか…と思ったけど、どうやらその心配は必要なかったらしい。
むしろ、もっともっと歩ける気がした。
でも、さすがに喉が渇いてきたので、重いリュックサックからペットボトルのお茶を出す。
目的地までもう少し…というところだけど、近くの大きな石に座ってみる。少し休憩しようと思ったからだ。
まだ開けていなかったペットボトルを開ける時に鳴る、パキッという、ちょっとした快感を伴う音を鳴らし、キャップを左手に持った。そして、右手に持ったペットボトルを顔の辺りの高さまで持っていき、お茶を飲んだ。うん、美味しい。
もしかしたら私が気付いていないだけで、本当は歩き疲れていて、だから余計美味しく感じたのかもしれない。
それでも、家の中で飲むものとは、ちょっと違った気がする。屋外の、しかも、木々の中の空気が混じっているのだろうか。
なんにせよ、少し、特別感を感じた。
そんな、少し特別なティータイムを終えて、私はまたもや歩き出した。
*
「おぉ、ここか…。」
『もみじの原』と書かれた看板が立っていたその先には、原…というか、細長い小さな公園のようだった。
…というか、重大な問題に気が付いた。
……モミジって、どれ?
視力の関係で見えないんですけど…。
あ、あれとかモミジっぽいけど……。
思ってた通り、半分くらいしか色づいていなかった。
半分真っ赤で、境目のところは綺麗なグラデーションになっていて…反対側の端っこの方は、緑。
11月だというのに、そこに秋と冬が同時に存在しているかのような。
その木だけは、秋になる準備を忘れているかのような。
もうすぐ立冬で、暦の上ではもう冬になるというのに。