そして、冬がやって来る。





もみじの原までは、かなり、思っていたよりもかなり距離があった。

…こんなに歩けたのか、私。


普段の移動は、専ら自転車なのであまり最近は歩いていなかった。

もしかしたら、歩いたらすぐに疲れてしまうんじゃないか…と思ったけど、どうやらその心配は必要なかったらしい。

むしろ、もっともっと歩ける気がした。


でも、さすがに喉が渇いてきたので、重いリュックサックからペットボトルのお茶を出す。

目的地までもう少し…というところだけど、近くの大きな石に座ってみる。少し休憩しようと思ったからだ。

まだ開けていなかったペットボトルを開ける時に鳴る、パキッという、ちょっとした快感を伴う音を鳴らし、キャップを左手に持った。そして、右手に持ったペットボトルを顔の辺りの高さまで持っていき、お茶を飲んだ。うん、美味しい。


もしかしたら私が気付いていないだけで、本当は歩き疲れていて、だから余計美味しく感じたのかもしれない。

それでも、家の中で飲むものとは、ちょっと違った気がする。屋外の、しかも、木々の中の空気が混じっているのだろうか。


なんにせよ、少し、特別感を感じた。


そんな、少し特別なティータイムを終えて、私はまたもや歩き出した。







「おぉ、ここか…。」



『もみじの原』と書かれた看板が立っていたその先には、原…というか、細長い小さな公園のようだった。

…というか、重大な問題に気が付いた。


……モミジって、どれ?

視力の関係で見えないんですけど…。


あ、あれとかモミジっぽいけど……。

思ってた通り、半分くらいしか色づいていなかった。


半分真っ赤で、境目のところは綺麗なグラデーションになっていて…反対側の端っこの方は、緑。

11月だというのに、そこに秋と冬が同時に存在しているかのような。

その木だけは、秋になる準備を忘れているかのような。

もうすぐ立冬で、暦の上ではもう冬になるというのに。




< 4 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop