そして、冬がやって来る。


「そんなデカい荷物、何入ってんだ…と思ってたけど、飴が入ってるとは思わなかったな。」

「よく言われる。荷物大きい、って。」

「他に、何入ってんの?」

「タオル、ボールペン、シャーペン、手帳、眼鏡ケース、エコバック、財布、飴、救急セット、折りたたみ傘、レインコート。あと、カメラはさっき入れたし、お茶も入ってる。」

「…折りたたみ傘があるなら、レインコートは要らなくね?」



彼は、他にも色々言いたいようだったが、それだけ言った。


多分、「やっぱり荷物多いな」とでも言おうとしたのだろう。

うちは、お母さんの荷物はこんなもん…むしろこれより多いくらいだから、これが普通だと思ってるけど……。弟も荷物多いし。カードゲームのカードとか持ち歩いてる。何に使うんだ。

でも、それは、彼や弟からしたら、私のことも同じように不可解なのだと思う。


…そういえば、お父さんは荷物少ないな。普通の男の人は、やっぱりあんなもんなんだろうか。



「傘は、歩いてる時用か人に貸す用。レインコートは、自転車に乗ってても使えるから。」

「抜かりねぇな。」

「もちろん。」



私は、やや得意気に答える。



「スマホは?」

「携帯の類は、持たせてもらったことがない。」

「…は、マジで?」

「マジマジ。」



素っ頓狂な顔をする彼に、私は平然と言い放った。


スマホのことも、よく言われる。

周りの友達は、みんな…多分、関わりがある人の中で90%ぐらいの人が持っていると思う。

それで話に入って行けなかったりしたこともあったけど、それ以前に、私は学校に行ってないから、話が合わない。

よく、スマホを持ってないと友達に着いて行けなくて、上手く関われないとかいうけど。

私は思う。そんな機械一つで壊れてしまう関係なんて、壊しちまえ。…と。


ただ、平日一人で出掛けることはあるから、時々不安になることもあるし……そういう時は、持ってたら安心なのかな…とは思う。

でも、面倒くさいから、闇雲に友達と連絡先交換したりはしたくないな。




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