夢原夫婦のヒミツ
こんなにも愛しくて守ってあげたい、そばにいたいと思える相手と出会ったのは初めてで、余計に気持ちを伝えることができず、時間ばかりが流れていった。

あの頃、武志によくからかわれていたな。いい大人のくせにヘタレすぎると。

しかしより一層奥手になるほど、愛実のことが好きだったんだ。

七歳も歳の差があるから余計にかもしれない。きっとこの先、愛実は社会に出てたくさんの新しい出会いがあると思う。

大学生のうちは、俺を慕ってくれていてもそのうち、見向きもされなくなるかもしれない……と思うと、到底告白などできるはずもなかった。

そんな俺の気持ちが変化したのは、上司に持ちかけられたお見合いパーティーへの参加だった。

それまで結婚に対して漠然としか考えてこなかった。いつかはするものだとしか。

だけどいつまでも若いつもりでいても、気づけばもう三十手前。同僚の中には結婚して子供を設け、家庭を築いている者もいる。

後輩に指導する立場にある俺に、声がかかったのにも頷ける。現に武志にも声がかかったようだし。
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