夢原夫婦のヒミツ
「それで俺にいい人がいないかって話だよな?」

「あぁ」

すると武志はすぐに答えた。

「そんな相手、いるわけないだろ? いたら毎日のように大和をからかって楽しんでいないって」

「……そうか」

まぁ、それもそうだよな。彼女ができたらそっちを優先するだろうし。

「だけど気になる子はいるよ」

「え、気になる子?」

思わず足は止まり、武志を凝視してしまう。すると彼も足を止めて片眉を下げた。

「別に普通だろ? 気になる子がいても」

「それはそうだけど……」

まさか武志にそんな相手がいるとは思わなかったから、驚きを隠せない。

だけどそうか、気になる子がいるのか。

「じゃあうまくいったら、ちゃんと紹介しろよな? こっちは愛実のことを紹介したんだから」

背中を叩いて言うと、武志は面白そうに言う。

「紹介ねぇ。したいけど、俺が気になる子っていうのは愛実ちゃんだからなぁ。どう紹介すればいいと思う?」

「は? 愛実って……嘘だろ!?」

思いがけない相手に動揺して武志に詰め寄ると、俺を見たこいつは「ぷっ」と噴き出し、声を上げて笑い出した。
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