夢原夫婦のヒミツ
「残りは俺が片づけておくから。……今日はありがとう。愛実も仕事で疲れているのに悪かったな。持ち帰り分まで用意してくれて、あいつすごく喜んでいたよ」

「いいえ、そんな……」

だって日比谷さんは私と大和さんの間を取り持ってくれた恩人でもある。それになにより大和さんの友達だもの。私にとっても大切な人だから。

「ゆっくり湯船に浸かっておいで」

そう言うと彼は腕を捲り、私に代わって洗い物をはじめた。

こういう大和さんの優しさに私は胸をキュンとさせられ、改めて彼のことが好きだと思い知らされている。

「ありがとうございます。えっとじゃあ先にお風呂入ってきますね」

「俺のことは気にせず、ゆっくり入ってきていいからな」

「……はい」

お言葉に甘えて浴室に向かうと、湯船には私のお気に入りの入浴剤が入っていた。

もう、大和さんってば。どこまで至れり尽くせりなんですか?

シトラスの香りに心も身体も癒されていく。

付き合っている時も、こうして結婚した後も、大和さんは優しくてなにかと私を気遣ってくれる。
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