夢原夫婦のヒミツ
「それでどうだったの? 初体験の感想を聞かせてよ」

「……っ!? ゲホゲホッ」

恥ずかしい質問に喉に詰まらせ、急いで水で流し込む。

「ちょっと蘭、なんてことを聞いてくるのよ!」
周囲の目を気にしながら小声で訴える。だけど蘭はキョトンとするだけ。

「え、なにをそんなに慌てているのよ。思春期の中学生じゃあるまいし。それでどうだった? やっぱり七歳も上だと、余裕があってとことん優しくしてくれたのかな」

ワクワクしながら私の答えを待つ蘭。

蘭ってばとんでもない勘違いをしてくれちゃっている。

たしかに大和さんとうまくいったとは報告したけど、そういう経験をしたとは一切言っていないのに。

「どうなのよ」

それなのに早く感想を聞かせてよと急かしてくる。そんな彼女に私は大きく咳払いをして、再び周囲を気にしながらボソッと伝えた。

「していないから」

「――え?」

どうやら聞こえなかったようで、耳に手を当てる蘭。

「だから、していないの!」

今度は力強い声で言うとしっかりと蘭の耳にも届いたようで、目を大きく見開いた。
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