夢原夫婦のヒミツ
思いもよらないことを言われて戸惑う。それは私の方なのに。

「いや、最近しみじみ思うんだ。……愛実に出会えたのは運命じゃないかと」

大和さんの口から出たとは思えない言葉に、目を剥く。言った大和さん本人も恥ずかしいのか、頬を赤く染めた。

「らしくないことを言っているとはわかっている。……でも言葉にして伝えなくてはいけないと、この前学んだから」

「大和さん……」

彼は私を見つめたまま優しく笑みを零した。

「俺の仕事のことを理解してくれて、気遣ってくれる愛実にいつも感謝している。……そして好きな仕事に就いて毎日頑張る愛実に元気をもらっているんだ」

嬉しい言葉に涙が溢れそうになる。なのに大和さんはもっと私を泣かせるような言葉を繰り返す。

「愛実の作るご飯が好きだし、可愛い笑顔が好き。……友達思いで優しくて、素直な愛実が愛しいよ」

だめだ、我慢できない。瞳からはポロポロと涙が零れ落ちる。

きっと大和さん、無理しているよね? だっていつもの大和さんは、こういうことを言うのは苦手なはず。
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