夢原夫婦のヒミツ
車から降りると大和さんはそんなことを言い出した。

「あぁ。愛実には及ばないけど、料理は得意な方なんだ。だから作らせて」

車を降りて自宅へ向かう短い距離でも、大和さんは私の手をギュッと握りしめた。

また好きって気持ちが蓄積される。

「ありがとうございます。楽しみです、大和さんの手料理」

「……あまり期待しないでくれな? 愛実ほど上手じゃないから」

自信なさげに釘を差す大和さんに笑ってしまった。

だけど部屋に入り、リビングの電気を灯した時、キッチンへ向かおうとしていた大和さんのスマホが鳴った。

彼は足を止めてスマホを取り出し電話の相手を見るなり、厳しい表情になる。

「はい。……あぁ、大丈夫、今家に着いたから。それでどうした? え、嘘だろ」

驚いた声を上げると大和さんは急いでテレビを点けた。

するとちょうどニュース速報のテロップが流れ、連日大雨が降り続いている西日本地域で大規模な土砂崩れが発生したと一報が流れた。

嘘、土砂崩れ?

ニュースを見て呆然となる。
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