夢原夫婦のヒミツ
「本当だ。迷子っぽいな」

近くを見回すものの、あの子を探している親らしき人の姿は見当たらない。

ホテルの前のビーチといえ、砂浜はお客さんでいっぱいいる。この中から探すのは困難だと思う。

「あの子を連れて、ホテルの人にアナウンスしてもらおうか」

「はい」

すぐに大和さんは男の子の元へ駈け寄り、そっと抱き抱えた。

「僕、名前は言える?」

そして優しく問うと男の子は小さな声で「だいち」と呟いた。

「そうか、大地くんか。おじさんたちと一緒にママを探しに行こうか」

「……うん」

すると大地くんは、大和さんに必死にしがみついた。その姿が可愛い。

早くお母さんを見つけてあげないと。

ホテルのフロントへ向かい、事情を説明するとすぐに対応してくれた。

男の子をホテルスタッフに預けて、私と大和さんは戻ろうとしたんだけど、大地くんは大和さんから離れようとしない。

困るホテルスタッフに大和さんは、「一緒に待ちます」と伝えた。

「悪い、愛実。いいか?」

「もちろんですよ。一緒に待ちましょう」
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