夢原夫婦のヒミツ
「愛実、いつものきていたわよ」

「え、本当?」

おばあちゃんの言う“いつもの”の正体はわかっている。

「えぇ。愛実の部屋の机の上に置いておいたわ」

「ありがとう、おばあちゃん!」

勉強の疲れなど一気に吹き飛び、急いで自分の部屋へと向かう。

締め切った部屋はモワッとしていて蒸し暑い。まずは窓を開けて空気を入れ替える。

そして届いた彼からの手紙を手に取ると、嬉しくて笑みが零れ落ちた。

早速ベッドに腰掛けて、手紙を開いた。

【こんにちは、愛実ちゃん。勉強の方は順調ですか? お祖母様に自分が進みたい進路を打ち明けることができたと聞き、ホッとしました。あとは受験に向けて、勉強するのみだね。頑張って】

手紙に書かれている文字を何度も読み返しては、足をバタつかせてしまう。

手紙を胸の前で抱きしめ、そのままベッドに横たわった。

「夢原大和さん……か」

手紙のやり取りをしている彼の名前を呟き、どんな人なのかと思い描く。

おばあちゃんのおかげで、私を助けてくれた人に迷彩服とお礼の手紙を送ることができた。
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