夢原夫婦のヒミツ
ど、どうしよう。夕食の支度をなにもしていない。あ、お風呂も洗っていない!!

立ち尽くしたままアワアワしていると、私に気づいた大和さんは小首を傾げた。

「ただいま、愛実。……どうしたんだ?」

「あ、あの……」

「ん?」

こちらにやって来ると、彼は「どうした?」と言うように私の顔を覗き込んでくる。

今日、私は仕事が休みでも大和さんは仕事だった。それなのに夕食はもちろん、お風呂の準備もできていないなんて……。これじゃ奥さん失格じゃない。

だけどこればかりは嘘をつけない。大和さんの顔が見られず、床に視線を向けたまま素直に打ち明けた。

「ごめんなさい、大和さん。まだ夕食の準備もお風呂も洗っていなくて……」

「……そうか」

あぁ、大和さんに幻滅されちゃったかもしれない。

チラッと様子を窺うと、なにやら大和さんは顎に手を当てて考え込んでいる様子。

結婚してから大和さんが怒ったことはないけれど、これはご立腹なのかもしれない。

サッと血の気が引き、すぐにもう一度謝ろうとした時。

「じゃあたまには、外食してそのまま近くの銭湯に行かないか?」

「――え」

思いがけない提案にポカンとなる。
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