夢原夫婦のヒミツ
「そういえば愛実、今日は友達と会ってくるって言っていたもんな。悪かったな、朝に外食しようって言っておけばよかった」

そう言うと大和さんは、優しく私の頭をポンポンと撫でた。

あ、あれ? 大和さん、怒っていないの?

「あの、怒っていないんですか?」

気になって聞くと、大和さんは目を見開いた。

「怒るって……どうして? 愛実に起こる理由なんてないだろ?」

「いや、だって……私、今日遊びに行っていたんですよ? それなのになにも準備していないなんて、奥さん失格じゃないですか」

手をモジモジさせながら言うと、大和さんはさらに目を大きくした後、顔をクシャッとさせて笑った。

「え……えっ!? どうして笑うんですか!?」

私、大和さんを笑わせるようなことなんて、言っていないよね?

頭の中にはたくさんのハテナマークが並ぶ。

少しの間笑った後、大和さんは落ち着かせるように息を吐くと、グッと私との距離を縮めてきた。

突然顔が近づいてきて、至近距離にドギマギしてしまう。

「や、大和さん……?」

どうにか声を絞り出して名前を呼ぶと、彼はふわりと笑った。
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