夢原夫婦のヒミツ
「あ、だけど墓参りの前に新婚旅行へ行かないとな」

「えっ?」

思いがけない話に目をパチクリさせてしまう。すると大和さんは疑いめいた目を向けた。

「なに? 愛実は新婚旅行に行かないつもりだったのか?」

「いいえ、そんなっ! い、行きたいです……!」

すぐに首を左右に振って力説すると、彼は笑った。

「俺も。……ごめんな、仕事で行けなくなって」

「全然です! 仕事ですもん。ちゃんとわかっています」

結婚する前に大和さんは自分の仕事のことを、私にしっかり話してくれたもの。

笑顔で伝えると、彼の腕が伸びてきてそっと私の頭を撫でた。

「今度まとまった休みを取るから。……新婚旅行に行こうな」

「……はい」

う、わぁ。どうしよう、胸が苦しい。

新婚旅行に行こうって言ってくれて嬉しい。そしてこのシチュエーション。

こ、これはいよいよ初めてのキス……?

甘いムードに期待が高まる中、彼は立ち上がった。

「そろそろ寝ようか。電気消すな」

「は、はい!」

電気を消す!? え、初めてのキスだけじゃなくて、もしかしてその先も経験しちゃう!?
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