夢原夫婦のヒミツ
芝生を囲むように遊歩道があり、街灯の下に来ると彼は足を止めた。私もまた足を止めて顔を上げると、いつになく熱い瞳を向けられていて胸が高鳴る。

それに大和さん、緊張している……?

その緊張が私にも伝わってきて、さらに胸の高鳴りは増すばかり。

少しすると、大和さんはゆっくり口を開いた。

「ただ自分と同じ境遇の愛実ちゃんに、少しでも元気になってほしかったんだ」

そう切り出すと、彼は私に対する想いを伝えてくれた。

「両親を失った悲しみは、誰よりも理解しているつもりだったから。……たった一通の手紙で終わると思っていた。でも思いがけず愛実ちゃんとの繋がりができて、やり取りをしているうちに最初は兄のような気持ちで見守ってきた」

やっぱりそう、だよね。七歳も年下で当時高校生だったもの。恋愛対象には見られず当然だと思う。

わかっていたことなのに、実際に彼の口から聞くとショックを受ける。

それでもその先の彼の気持ちを知りたくて、口を挟むことなく耳を傾けた。
< 99 / 244 >

この作品をシェア

pagetop