麻布十番の妖遊戯
真っ赤になった目で牙を剥き、俺の腕に噛み付いたのだ。
昔飼っていた犬に食いちぎられた指の痛みに似ていて思わず体が大きく震えた。
また食いちぎられると思って悲鳴をあげて制したが無駄だった。犬は俺の足にも噛み付いた。犬の牙から逃げようと蹴ったが犬には届かず、犬が落ち着くのを待っていると、がちゃりと音がした。
犬が飛び出した瞬間に檻のドアが壁に激しくぶつかった。その反動でドアが閉まった拍子に鍵ががちゃりと閉まってしまった。
その鍵は外からしか開けられないように自分で改造したものだった。
手と足からは出血がひどく、血は止めどなく溢れてくる。犬は部屋から飛び出していったままどこへ行ったのかわからない。逃げたに違いない。
家の中に何かがいる気配はまったくなかった。
所詮犬一匹が入れる檻だ。なんとか自力で腕を出せば動かせる。こんな状態を見られるのは恥ずかしい。
スマホを持ってくるべきだった。後悔がつのる。
最悪居間まで行けば電話もあるし、叫べば外を通る人に声が届くだろう。そう簡単に考えていた。
檻に犬を入れたときに犬が嫌がり、檻を力任せに倒して脱出しようとしたことがあった。それをすっかり忘れていたのだ。
だから俺は動かせないように床に檻を固定するべく鉄を打ったのだ。
血の気が引いた。出られない。鍵は玄関に置いてある棚の上だ。
ここから一歩も動けないとなったら誰かが来るまで、助けが来るまでこの中から出られないということだ。
しかもこの部屋は、一番奥。窓も黒く塗りつぶしているしシャッターも閉めてあるから声は完全に聞こえない。
昔飼っていた犬に食いちぎられた指の痛みに似ていて思わず体が大きく震えた。
また食いちぎられると思って悲鳴をあげて制したが無駄だった。犬は俺の足にも噛み付いた。犬の牙から逃げようと蹴ったが犬には届かず、犬が落ち着くのを待っていると、がちゃりと音がした。
犬が飛び出した瞬間に檻のドアが壁に激しくぶつかった。その反動でドアが閉まった拍子に鍵ががちゃりと閉まってしまった。
その鍵は外からしか開けられないように自分で改造したものだった。
手と足からは出血がひどく、血は止めどなく溢れてくる。犬は部屋から飛び出していったままどこへ行ったのかわからない。逃げたに違いない。
家の中に何かがいる気配はまったくなかった。
所詮犬一匹が入れる檻だ。なんとか自力で腕を出せば動かせる。こんな状態を見られるのは恥ずかしい。
スマホを持ってくるべきだった。後悔がつのる。
最悪居間まで行けば電話もあるし、叫べば外を通る人に声が届くだろう。そう簡単に考えていた。
檻に犬を入れたときに犬が嫌がり、檻を力任せに倒して脱出しようとしたことがあった。それをすっかり忘れていたのだ。
だから俺は動かせないように床に檻を固定するべく鉄を打ったのだ。
血の気が引いた。出られない。鍵は玄関に置いてある棚の上だ。
ここから一歩も動けないとなったら誰かが来るまで、助けが来るまでこの中から出られないということだ。
しかもこの部屋は、一番奥。窓も黒く塗りつぶしているしシャッターも閉めてあるから声は完全に聞こえない。