麻布十番の妖遊戯
 登は昭子を目で追いながら、何かされるのではないかと体も精神も強がりながらもビクつかせていた。

 太郎も、「動物殺しってえのはな、お前から先の一族、血の繋がりがあるもの余すことなくすべて、七代まで祟るんだよ。お前は死んでからも一族全員に祟られる運命だ。良かったな」と真顔で言い、侍ははるか昔に自分の身に起こったことを思い出したのか、体をぶるると震わせた。

 三人は登がただの腰抜けの弱虫で、自分よりも弱い立場のものにしか強気に出られない奴だと分かると、更にその嫌悪感を露わにした。

 登は檻の中に横たわる己を今一度見下ろし、こんなことになるなんて、と独り言ちた。
 三人に向かい直すと、そこには三人以外のものが自分の方をじいっと睨んでいるのが目に入った。

「猫夜? それに犬飼じゃないのか? ああそうだ。おまえたちだ。久しぶりだなあ、おまえたち、俺を迎えにきてくれたのかい? ああ、そうだ、その前に俺を助けてくれ。見ろ、ここにいるこの三人は本当に怖い。俺をどうにかしようとしてるんだ。どうかしてるだろまったく」

 見知った猫夜と犬飼にほっとし、己がしたことは忘れてしまったのか、笑顔すら浮かべて二匹に寄っていく。
 
 当然、猫夜も犬飼も登を冷たく睨んだまま寄ろうとはしない。
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