麻布十番の妖遊戯
登は太郎が言った言葉に恐怖で腰を抜かした。
見える景色はいつのまにか己れが閉じ込められた部屋の中になっていた。
支離滅裂な言葉を叫びながら力の入らない足で床を何度も繰り返し蹴り、なんとか逃げようとする。目には涙すら浮かべていた。
「このときをどんなに待ったか。長かった。本当に長かった。でもやっときた。我らの感じた恐怖と苦しみをおまえにも余すことなく味わってもらう」
猫夜が飛びかかる態勢を整えた。
「おまえなんかに拾われなければ、我らはもっと生きられたのだ。野良猫として生きたほうが幸せだった」
犬飼も猫夜を守るようにその巨体で猫夜を懐にかばう。
登はあっけにとられた。
目の前で動物がしゃべったのである。
そんなことが起こるのは漫画の中だけの話だと思っていた。それが目の前で起こっている。
「おまえたち、しゃべれるのか」
今までのことはすっぽり抜け落ちたのか、目の前の状況にその顔にはうっすら笑みすら浮かべている。この二匹は自分が手にかけたのだ。自分が殺したものを怖がるような男ではない。
昭子と太郎と侍には恐怖を感じるがそれは『人』だと思っているからだ。人以外であったらこの期におよんでもまだ自分は勝てると思っている。
それを感じ取った三人は、
「こいつはあたしらを人間だと思ってるよ。まったくバカにつける薬がないとはこのことだねえ」
「頭が足りないとは思っていたがここまでの足りなさだとは知らなんだ」
「どれ、では俺らは本来の姿に戻るとしましょうか。人に間違われるなんて、ああ、こいつ、殺してやりたい」
昭子、侍、太郎が順に言いながらその体を黒く変色させながら影の内に入り込む。
「きききき消えた。そんな……」
慌てふためく登はやっと今、あの三人が人でないことを理解した。
見える景色はいつのまにか己れが閉じ込められた部屋の中になっていた。
支離滅裂な言葉を叫びながら力の入らない足で床を何度も繰り返し蹴り、なんとか逃げようとする。目には涙すら浮かべていた。
「このときをどんなに待ったか。長かった。本当に長かった。でもやっときた。我らの感じた恐怖と苦しみをおまえにも余すことなく味わってもらう」
猫夜が飛びかかる態勢を整えた。
「おまえなんかに拾われなければ、我らはもっと生きられたのだ。野良猫として生きたほうが幸せだった」
犬飼も猫夜を守るようにその巨体で猫夜を懐にかばう。
登はあっけにとられた。
目の前で動物がしゃべったのである。
そんなことが起こるのは漫画の中だけの話だと思っていた。それが目の前で起こっている。
「おまえたち、しゃべれるのか」
今までのことはすっぽり抜け落ちたのか、目の前の状況にその顔にはうっすら笑みすら浮かべている。この二匹は自分が手にかけたのだ。自分が殺したものを怖がるような男ではない。
昭子と太郎と侍には恐怖を感じるがそれは『人』だと思っているからだ。人以外であったらこの期におよんでもまだ自分は勝てると思っている。
それを感じ取った三人は、
「こいつはあたしらを人間だと思ってるよ。まったくバカにつける薬がないとはこのことだねえ」
「頭が足りないとは思っていたがここまでの足りなさだとは知らなんだ」
「どれ、では俺らは本来の姿に戻るとしましょうか。人に間違われるなんて、ああ、こいつ、殺してやりたい」
昭子、侍、太郎が順に言いながらその体を黒く変色させながら影の内に入り込む。
「きききき消えた。そんな……」
慌てふためく登はやっと今、あの三人が人でないことを理解した。