麻布十番の妖遊戯
「ふん。みくびってくれちゃ困るってもんだ。
俺がすんなり言いなりになると思ったら大間違いだぜ。
それに俺は何一つ悪いことなんざしちゃあいねえ。ただ遊んでただけで奉公に出されるなんてひでえ話じゃねえか。クソ」
手の平で鼻をこすり、大吉は両親が営んでいた新鮮な海鮮を食べさせる料理茶屋の帳場に入り込み、そこで名目は手伝いとして任されていた弟中吉に、
「おう、中吉、今しがたおっかさんが呼んでたぜい。ここは俺が見てるから行ってきな。
なるたけ早く帰って来てくれよな、俺はこんなとこで座って待ってるほど暇じゃあねえんでな。へへ」
と弟に言うと、弟が大吉の嘘に引っかかっておっかさんのところへ行っているうちに、
店の金を根こそぎごっそり袋に放り込み、そのままどこぞへととんずらしてしまったのである。
「その後、店がどうなったのかは俺にはわからねえこったわな」
侍は二杯目のメロンソーダをズズッと勢いよく啜った。
俺がすんなり言いなりになると思ったら大間違いだぜ。
それに俺は何一つ悪いことなんざしちゃあいねえ。ただ遊んでただけで奉公に出されるなんてひでえ話じゃねえか。クソ」
手の平で鼻をこすり、大吉は両親が営んでいた新鮮な海鮮を食べさせる料理茶屋の帳場に入り込み、そこで名目は手伝いとして任されていた弟中吉に、
「おう、中吉、今しがたおっかさんが呼んでたぜい。ここは俺が見てるから行ってきな。
なるたけ早く帰って来てくれよな、俺はこんなとこで座って待ってるほど暇じゃあねえんでな。へへ」
と弟に言うと、弟が大吉の嘘に引っかかっておっかさんのところへ行っているうちに、
店の金を根こそぎごっそり袋に放り込み、そのままどこぞへととんずらしてしまったのである。
「その後、店がどうなったのかは俺にはわからねえこったわな」
侍は二杯目のメロンソーダをズズッと勢いよく啜った。