麻布十番の妖遊戯
「ほらまた始まった。侍はいっつもこれだよ。話はここから面白くなるってところで話を切る。尻切れ蜻蛉とはこのことさね。ああ、いやだいやだ」

「肝心なところは言わないって一番嫌なタイプですよね。みんなから嫌われるやつですよ侍さん」

 昭子と太郎が侍にもんくを言う。
 しかし、その顔は何やら知った顔で目をギラつかせながらたまこの様子をうかがっていた。

「それで終わりなの、侍さん、その後お家がどうなったか本当に知らないの? 弟さんとは会ってないの? 

 そもそもくすねたお金はどうしたの? どこへ行ったの? ふつう家族の人は探しに来るでしょう? なんでわかんなくなっちゃったの?」

「すげえ質問攻めにしてくるな。たくさんあるとわからなくなるだろうが。質問はどれか一つになんないかねえ」

 侍がたまこに遠慮なく嫌な顔を向けつつも口元は笑っている。
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