麻布十番の妖遊戯
「あの男、やっぱりあたしが殺してやりたかったわ」
昭子が歯ぎしりをし、両の拳を握りしめてこたつテーブルを叩く。
「そりゃ俺らみんなが思ってることさ。昭子さんだけじゃあねえよ」
侍も鼻息荒く「ちくしょうめ」と吐き捨てた。
太郎はただただにんまりと笑っている。
「私のせいで『瑞香さん』は殺されたんですね。助けてくれようとした女性は、以前ここへ来たあの女性、瑞香さんですよね」
三人の顔を真顔で見つめ、たまこが確認するように言う。
「おまえのせいじゃあない。あの男は遅かれ早かれみんな殺すつもりだったんだよ」
侍が間髪入れず返し、
「自分のせいだと思うのは間違いよ。それは違う。あんたのせいっていうのだってあの男が言ったことでしょう? そんなこと思ってちゃ瑞香さんが可哀想ってもんよ」
昭子がたまこの考えをやんわりと変え、たまちゃんの言う通り、殺されたのは瑞香だとさらっと言う。
「この前ここへ来たとき、たまちゃんは瑞香さんが見えていたけど、瑞香さんからたまちゃんは見えていなかったはずよ。黒い靄に見えてたと思う」
「靄に? なんで瑞香さんには見えないのに私には見えるんですか」
昭子が歯ぎしりをし、両の拳を握りしめてこたつテーブルを叩く。
「そりゃ俺らみんなが思ってることさ。昭子さんだけじゃあねえよ」
侍も鼻息荒く「ちくしょうめ」と吐き捨てた。
太郎はただただにんまりと笑っている。
「私のせいで『瑞香さん』は殺されたんですね。助けてくれようとした女性は、以前ここへ来たあの女性、瑞香さんですよね」
三人の顔を真顔で見つめ、たまこが確認するように言う。
「おまえのせいじゃあない。あの男は遅かれ早かれみんな殺すつもりだったんだよ」
侍が間髪入れず返し、
「自分のせいだと思うのは間違いよ。それは違う。あんたのせいっていうのだってあの男が言ったことでしょう? そんなこと思ってちゃ瑞香さんが可哀想ってもんよ」
昭子がたまこの考えをやんわりと変え、たまちゃんの言う通り、殺されたのは瑞香だとさらっと言う。
「この前ここへ来たとき、たまちゃんは瑞香さんが見えていたけど、瑞香さんからたまちゃんは見えていなかったはずよ。黒い靄に見えてたと思う」
「靄に? なんで瑞香さんには見えないのに私には見えるんですか」