麻布十番の妖遊戯
 わかってると思うけどあんたは既に死んでいてね、この世に残っているある男に恨みを残しているんだよ。

 で、どうにもこうにもそいつをなんとかしてやらないと上に逝くにしても逝けない。

 でもだ、どうやったらいいのかやり方がわからない。呪い殺したくてもやり方がわからない。

 首を締めようにも相手に触れもしないんだから全く話にならない。なにもできずにあんたはもどかしい思いを募らせていた。

 そんなもんもんとしていたある日、道端である人に会ったんだ。

 そこで交わした約束により、あんたはしばらく無になって消えていてね、時がくるのを待っていたのさ。

 長い時間無になっていたんだ。忘れていても仕方ない。

「でだ、今日がその恨んでいる男の死ぬ日なんだよ。だから、ここに出てきたってえわけさ。

 ん? この家かい? ここはあんたみたいな霊が最後の仕事をする為に作られた言わば最後の憩いの場ってところだよ。ずっといてもいいぜ」
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