麻布十番の妖遊戯
 嘘か本当か判断できぬようなことをさらりと言い、得意気に話した太郎が鼻を鳴らしたすぐ後で、

「なあにが憩いの場だよまったく。ここのどこに憩いがあんのさ。遊びやがって」

 黙って聞いていた昭子が太郎に突っかかったが、その顔には笑みが乗っかっていた。

「まあ、ずっといられちゃあ困るってもんですけどね」
 太郎はニタニタ笑っている。

「いいかい、あんたが霊になってからもう随分と長いけど、自分を殺した男の霊にもう一回殺されるなんてまっぴらごめんだろう? 

 こっちが霊であっちが人間だったらあんたの勝ちさ。怖がらせて取り憑くことだってできる。

 あんたはそれをしなかったけどねえ」

 しかしだ、お互い霊になっちまったら対等さ。
 人殺しをしてきてる奴なんだ。
 いいようにかまされて二度殺されるよ。

 だからあたしたちがいるんだよ。と昭子は胸を張った。
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