麻布十番の妖遊戯
「そうだ、その話の中であなた方のことも聞きました。俺には強い仲間がいると。そしてそれは妖怪なんだとも聞きました。本当に妖怪なんでしょうか」

 じろじろと遠慮なく二人を眺め回す。

 初めて侍に会ったときに聞いた妖怪という言葉を噛み砕いて自分自身に納得させるまでにややしばらく時間がかかった瑞香ではあるが、己も幽霊なのだ、そう考えれば妖怪がいたって何一つおかしくはないと言い聞かせた。

 妖怪なんてものは昔話の一つにすぎないと思っていた。

「あららら、侍さんが既に妖怪ってのをバラしちゃってんなら仕方ねえ。

 いやね、いつもはこの話を端折って有耶無耶にするってだけだから。別に隠しちゃあいねえよ。聞かれりゃ答えるだけでわざわざこっちからは言わねえだけさ。

 で、既にご存知のとおり俺たちは江戸のもっと前からいる妖怪でね、時代時代で姿形を変えてこうやって人の世を楽しんでるんだよ」
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