麻布十番の妖遊戯
 お前さんのように霊だって元々は人だ。

 死してから我ら妖怪の存在を足らしめるのも悪かない。我ら妖怪ってもんはこの世にちゃんと存在してるというのを知らしめるのにも丁度いい。

 己の見解に納得するように太郎は頷いた。そして、

「ついでに一つ二つ良いことでもしてやりゃあ、我らの気持ちも更に良くなるってもんでね」

「これは良き考えだったよねえ、我らは本当に頭がいい。そう思うだろう」

 昭子がとびきりの笑みで問うてきたら瑞香も大きく頷く他ない。

 不思議なことに、昭子が大きく笑うと辺りが凍えるように寒くなるのだ。

「やはり俺らの考えたことは間違いがないな。長くいるだけで知恵がつく。やはり年長者は敬うってえのはまんざらでもない」

 と、太郎と昭子の機嫌はますます良くなっていく。

 そんな二人に瑞香は、太郎さんも昭子さんもちょっと変わっているけれど、なんだか安心できる。悪い人じゃない。

 妖怪か。彼らは妖怪だけど、なんかほっとする。
 
 自分でも忘れていることをしっかりと思い出すためにも、整理する目的も含めて話してみようか。

 そんな不思議な気持ちになるのであった。
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