麻布十番の妖遊戯



 大学を卒業した瑞香は渋谷区にあるとある不動産会社で事務員として働き始めた。

 与えられた仕事は、部屋を借りにくるお客さんの接客、空き部屋の清掃、事務処理がほとんどだったが、基本的に真面目な性格な上、遅刻、無断欠勤もせずコツコツと仕事をこなしていた。

 浮ついた話もないまま、年は二十六にさしかかろうとしていた。

 同年代の友人はほぼ結婚して子供を作り家庭を持ち始めると、自然と会う回数も減っていった。

 瑞香も焦りを覚えたが、その頃には仕事でも面白みを感じ始め、後輩もでき、毎日が忙しく潤っていた。

 仕事に邁進しているので、良い人と出会う機会は無いに等しかった。

 そんな時に会社の友人の一人に教えてもらったのがネットでの出会い系サイトだった。

 忙しい人用に作られたサイトで、瑞香みたいに仕事漬けで出会いもろくすっぽ無い男女が登録しているので、

もしかしたら合う人が見つかるかもしれないから、暇つぶしにやってみたらと誘われた。

 瑞香もそれならと気軽な気持ちで登録し、使い方もよくわからなかったので作ったまま放ったらかしにしていたある日、登録しておいたメールに一通のメッセージが届いた。

 茨城県に住む男性からのものだった。
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