麻布十番の妖遊戯
 しかし、これだけ田舎でこれだけ古い家だ。

 庭道具しか入ってないとはいえ、大切にしている物や昔ながらの引き継がれている家宝のようなものもあるだろう。

 南京錠を三つするほどだ。大切なものが入っているに違いない。

 そう思えば思うほど中を見て見たくなる。

 幸いにも木で作られている。木の隙間から中が見れないかと、中が見えそうなところを探してみるが、かなりしっかりした造りで隙間はどこにも見つけられなかった。

 小屋の周りの草木は手入れがされていないのに、小屋全体はなぜか埃っぽくもなく、南京錠も錆びついてない。新しい。そして使っている形跡があった。

 どうなっているのか確かめるためにぐるぐると小屋の周りを回ってみた。

 小屋には隙間一つなくやはりどうあがいても入れそうもない。一度立ち止まる。

 諦めて家に戻ろうとしたが、家の中に入ってもやることもなく暇だ。

 瑞香は更にもう一度小屋の周りを歩き、小屋を触ったり叩いたりしながら中に入れないか、もしくは何か開けられるような形跡がないか、探し回ることにした。

 そんな時、小屋の中からことりと物の落ちる音が聞こえた。瑞香の全身にチクリとした痛みが走る。

 小屋の中から音がするなんて、そんなことあるはずがない。きっと小動物かなんかが床下から入り込んだんだろう。

 もしくは中の物が勝手に落ちたかだと言い聞かせ、南京錠のかかっているドアのところまで行き、耳を当てて音を聞いたが、何も聞こえない。
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