麻布十番の妖遊戯
「閉じ込めとくのはわかるとて、殺した後の身体はどこにやったんだい? 畑ったって何体も埋めりゃあ独特なあのにおいが辺りに出るだろう」

 昭子、侍、太郎がやいのやいのと口々に言い合っている。

 瑞香のことはさておき、ひとまずここまでの話を聞いた自分たちの持論を我先に話しだし、収集はつかない。
 有る事無い事話に花をこんもり咲かせて話すのが好きなのだ。
 そんな三人に瑞香はただただ目をキョロキョロさせている。

「畑に死体が埋まってる。その上に野菜の種を蒔き、それを養分に成長して実になった野菜を次の獲物に食べさせるなんて正気の沙汰じゃねえわな」

 太郎が腕組みをしてちっと舌打ちした。目を細め、唇を耳まで引き伸ばして悪い笑みを浮かべる。

「しかも自分より弱い立場の女子を手にかけるなんて、死んでからもう一回殺してやりたいわね」

 昭子が閃いたとばかりに楽しげな顔をした。「今回は殺しちゃえばいいんじゃない? 私たちで」とぽんと手を打った。

「ダメですよ昭子さんそれは」

 すかさず太郎が待ったをかける。

 つまらないとばかりに口を尖らす昭子は話の矛先を瑞香に向けなおした。
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